杭打ち業界のデータ改ざん問題が拡大する一方ですね。
昨今の報道において、「杭が支持層に未到達の場合でも安全性の確認をして十分強度があればOK」、という意味の事が良く言われているのですが、この事がよく分からない人がいるかもしれません。
杭が支持層に到達していなくても安全とはどういうことでしょう?
私は前職で橋梁の設計をやっており、杭の設計もやっておりました。(もう今は転職したのでやっておりませんが)
建築とは細かい部分が多少違うかもしれませんが、大体は以下のようなことと理解して頂ければ良いかと思います。
そもそも構造物の設計をする際には、計算上、ギリギリの設計をするのではなく、「安全率」という余裕を持って設計します。
安全率は支持力、杭、橋脚など設計部位ごとに、設計条件ごとに見込んで設計します。(常時、地震時(よくある震度2~3くらいの地震、関東大震災タイプの地震、阪神・淡路大震災タイプの地震など))
この安全率、というもので見込まれるのは、特定の外力ではなく、想定外のことが起こっても利用者が安全でいられるためのいわば設計における貯金のようなものです。
人間とは必ずミスをするものであり、一つの構造物が完成するまでに何十人、何百人もの人が関わる状況において、それぞれの人が少しづつ施工不良(少し鉄筋の配置がずれてしまった、など)をしても、それでも大丈夫なようにと設計されているのです。
杭が支持層に到達していなくても、この安全率の範囲内に入っていれば(いわば設計上の貯金があれば)、地震動などの外力を与えても構造物は持つということなのです。
新聞記事などを読むと、杭の工事関係者は「多少のことは大丈夫だと思っていた」というような発言をしているようですが、今までこの安全率のおかげで問題になってこなかったのでしょうね。
毎日やっていると少しづつ手を抜きたくなってくるのが人間というもの。
私も自分自身を戒めつつやっていきたいと思います。